014

観光物産業概論[1]実態分析編


「観光物産業概論[1]実態分析編」
(株式会社全国観光と物産新聞社編集長 稲田俊明編・著)のレポートです。

    • -


本書には土産品行にスポットをあて、
「観光」と「土産品(物産)」の相互関連を分析し、
また「土産品業(物産業)」の実態を分析しようという試みがある。


まず第1章では観光土産(物産)の概念について述べられている。
観光と土産品はいわば心象に対する形象、あるいは不即不離、
表裏一体の関係にあることから「観光土産品」と総称されるのであろう。
いずれにしても、旅する人の思い出、
情緒を作るのが観光土産品であると筆者は定義している。
また、日本民族は元来農耕民族であり、農耕においては
たくさんの人々の連携が必要不可欠であり、
いかに円満に付き合うかが重要視されていた。
それがいつしか他人(=相手)に対する思いやりを
“形”として表わすことになったのではないかとも筆者は述べている。
しかし現在の土産品は、土産品=特産品との
固定概念ではとらえられなくなってきており、
他の地域で製造された商品に、その土地の名称を付して
土産品として販売されるケースも多くみられることは周知の事実である。
更に筆者は、現在の観光土産品という言葉の一般概念には
単に“他人に差し上げるためのもの”ではなく、
“自分自身の旅の思い出になるもの”などというように、
自分自身のために買い求める傾向が強くなってきていると言及している。


第2章では、観光土産産業の変遷(土産品発祥から今日まで)
について書かれている。
土産品といえばその土地の産物のことであり、
地元の人が生産したものを地元の土産店に直接持ち込み、
卸していたのが基本であった戦後から昭和40年代。
昭和40年代後半には日本万国博覧会により国内旅行ブームに火がついた。
全国各地に土産業に携わる業者がこの頃一気に増加したという。
昭和50年代にはファンシー、ギフトなど他業界からの商品流入が激しくなり、
それまでの泥臭いイメージの土産品に、
斬新なデザインを駆使したハイセンスな商品を供給した。
そして現代では、全国どこにでもあるような民芸雑貨は飽きられ、
食品が売れ筋商品となっているものの、
低価格志向が強く、売り上げが伸びない、
物産業は「淘汰」の時代に入ったと筆者は述べている。


第3章では観光活動の動向が述べられている。
近年の観光市場では、平成バブル不況以降、宿泊観光の落ち込み、
日帰り観光の伸びのいわゆる「安・近・短」傾向の
顕著化がよく言われている。
更に、高額旅行商品の売れ行き不振、土産品の買い控えと低額化等、
いわゆる節約旅行が一般化しているという。
しかし、世論調査の結果をみると、
今後の生活の力点に「レジャー・余暇生活」を挙げる者が35.3%、
今後1年間くらいの間に
「宿泊観光レクリエーションをしたいと思う」者が77.0%を占める等、
観光レクリエーションに対する消費者の関心は強いものがあるようだ。


第4章には土産品需要の動向が書かれている。筆者の試算によると、
平成6年の観光総消費額は13兆900億円にのぼるらしい。
その中でも、買い物・土産代に充てられるのは
全体の28.8%、3超7,699億円であると推計されている。
第5章では観光土産産業の現状と
特性(今日の土産品流通の実態)について述べられている。
狭い土産品業界の流通ルートだけを商品が流れていた昭和40年代、
技術の高度化により土産品の生産量が飛躍的に増大し、
それと同時に価格競争の激化がもたらされた昭和50年代、
土産品に対するニーズの多様化、
他業界からの異種商品の流入、更には物流システムの発達によって、
土産品の遠隔地への供給が可能になるなど、様々な変化のあった昭和60年代、
そして消費低迷や国内旅行の不振による
売り上げ減少という初の試練を迎えている現在と、
土産産業は目まぐるしく変化してきている。


第6章では観光土産品の販売施設とその実態について書かれている。
現在の観光は社会、経済情勢の変化により、
その目的や形態も変化しているという。
従来は景勝地、寺社仏閣など観光地を点として
点の旅を楽しむスタイルが強かったが、
現在はその点へ向かうコース上でも旅を楽しみたいとする
線や面の旅の傾向が強くなってきている。
これにより観光地が多様化し、
それに伴って観光土産品の販売環境へも変化が与えられた。


最後に第7章では、観光土産品の売れ筋商品変化について、
季節、地域、いろいろな属性(パターン)別に分析し、解明されている。
1995年の1年間を通しての売れ筋商品は、総合業者では圧倒的に食品が、
民芸業者ではキーホルダーが1位であった。
また売れ筋価格帯は、民芸は回転が鈍いものの価値に即し、
高価格でも売れる傾向にあるが、
他方で食品は500円の一極集中にあるという。
また筆者の分析により、
「秋は食品が強く、夏は民芸雑貨が強い。春はその中間の傾向」
という業界の通説も解明されている。


本書が発行されたのが1997年であるから、
当時と現在では更に土産産業の状況も変化してきているだろう。
日本独自の文化を見直そうという傾向が強い近年は、
新しいもの、珍しいものが求められていた時代とは異なり、
それとは逆に、いかにもその土地ならではの物産(食べ物や工芸品等)が
消費者に求められているように思う。
また最近では、観光地へ行くことだけではなく、
観光地への道のりも旅の一つとして考えられるようになってきているため、
道の駅と言われる施設が増加してきているのではないだろうか。




もっと本を読みこむ力がほしいです
クリックお願いします^^
↑クリックお願いします!!