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先日東京ミッドタウンで開催された
慶応義塾大学SFC Open Research Forum 2012にて
現在取り組んでいる研究について、展示発表を行ないました。


"amune"は、布の編み目からヒントを得た組み立てピースで、
構造を知ることで、素材の性質に対する理解を深めることを目的としています。


色彩と同じように、素材について学習する機会をつくりたいと考え、
これまで、子どもをターゲットとした工作ワークショップの実施や図画工作科授業の見学など、
工作活動時における子どもと素材の関わり方の観察調査を行なってきました。
これらの調査を通じ、こんな触り心地だったんだ!こんなに伸びるんだ!などといった
素材の性質に関する気づきをただ与えるだけでは
それは単なる「面白い体験」に過ぎず、その後のものづくり活動や
日常生活での素材との関わり方に活かすことができないのではないかという考えに至りました。


そこで、触感などの感覚に頼るのではなく、成り立ちを知ることで性質を理解させる、
ということに重点を置いた素材学習の開発に取り組んできました。




来場者の方々からは想像以上に良い反応をいただくことができ、嬉しさもありますが、
この研究の面白みをきちんと伝えるためには、
ここからどのような方向性で論文をまとめていくかを丁寧に詰めていかなければなと思いました。
残り1ヶ月ちょっと、全力で進めていきたいです。

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これまでに主に読んだ本のまとめです。子どもや遊び、玩具というテーマで研究をするのであれば、カイヨワとホイジンガの著書には目を通しておいて損はないと思います。
   

   
最近は一日1冊なんとか読み終えることができていて、我ながらとてもいいペースだなと思います。今後は作業療法発達心理学認知科学の本をもっと読み漁りたいです。

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〈問題意識〉
そもそもは、植物に対する知識を深めるための遊び道具を制作したいと考えていました。ただ、植物の知識を修得することが子どもたちにとってどのようにプラスになるのかということがあまり思い描けませんでした。もちろん、自然を大事にするとか、そういうメリットはあるかもしれませんが、それが本当に自分のやりたいことではないように感じていました。そんなときにフィールドワークがてら参加した子ども向け工作ワークショップで、作り方の手順が示されており、道具や材料もきちんと用意されているにもかかわらず、手が止まってしまったり、上手く用いることができずに投げ出してしまう子どもの姿を見ました。始めは、単に根気のない子どもなのかもしれないと思っていたのですが、少し素材の扱い方のヒントを出したとたん、次から次へと作品をつくり出しました。ということは、手が止まるなどしてしまうのは素材そのものと向き合う機会が少ないからであると考え、それならばそのような機会を生み出せばよいのではないかということから、現在のような研究に取り組むことにしました。


〈活動の定義〉
わたしがいま取り組んでいる研究活動は、子どもたちに自分の手でものをつくることの楽しさを感じてもらうため、そして子どもたちのものづくりの可能性を広げるために、素材と様々な関わり方をするためのプロセスやツールを考え、実際に子どもたちに使ってもらうことによって、「こんな仕組みなんだ!こんなことができるんだ!」というような、素材に対する発見を促す活動である。


〈データの入手方法〉

  • 幼稚園、保育所、小学校などにおける子どもたちの遊び方、工作活動の観察調査
  • プロセス、ツールのユーザーテストおよびそれらを通じてのフィードバック
  • ワークショップの検討、実践
  • 先行研究:レッジョ・エミリアの教育方法


〈対象範囲〉
年齢別ではなく、ある程度対象とする素材に慣れ親しんだ子ども、あまり触れたことの無い子ども、初めて触れる子どもという分類で研究を行ないたい。


〈調査の目的〉
子どもはそもそもどのように素材(いつも扱っているもの、初めて扱うものなど)と向き合っているのかということを、工作などの活動の観察を通じて調査する。また、発見はどのような瞬間に生まれるのか、発見したとき子どもはどんな様子か、自分だけの力で発見をするのか、周りのファシリテーションにどのような影響を受けるのかということについても観察調査を行なっていきたい。

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ある授業で紹介された、「調査という活動を定義(点検)するためのリスト」の項目にのっとって自分の研究についてまとめてみました。自分のやっていることを端的に相手に伝えることができるよう、もっと文章をブラッシュアップしていきたいです。

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先日、教育やアート、理工学部の院生の方など、色々な分野の人に研究に関する話をさせていただく機会がありました。そのときのフィードバックメモです。

  • 例えば紙など、ある素材から構成されている素材を一度分解し、再構成してみるというのも、その素材に対する理解を深めるひとつの方法ではないか。
  • それぞれの素材の作られ方について学ぶ機会があってもいいのかも。
  • 図工室に素材入れを用意し、子ども達にそれぞれ色々な素材を持ってこさせるようにしているがなかなかうまく行かない。子どもはもしかしたら、シルクや麻などというよりも、布や紙といった素材の名称、もしくは形や色で素材を分類しているのかもしれない。
  • つまり、紙は紙、布は布、というところよりも先に進むことができていない?
  • 偶然を装わせるのではなくて、偶然を仕掛けることのできる環境や状況をつくることはできないか。
  • 理論として分からせたいのか、それとも感覚で学ばせたいのか。
  • 行為を行なう中で発見し、理解させるという方法が必要。
  • 紙すきのときにエタノールを少し加えると、繊維同士が縮むのを防ぐらしい。(エタノール+でんぷんのりとか?)
  • 答え合わせができると面白い。
  • 0から始めさせるのではなく、それをアフォードするような、少しのヒントやとっかかりを用意してあげること。


また、ちょうどそこに女の子(7歳/小学1年生)もいたので、以前制作したマテリアルキューブ*1で遊んでもらいました。
反応はとてもいまいちで、「ふーん」と少し手に持って一通り触るとすぐにどこかへ行ってしまいました。子どもにとっては、ただの四角いブロックでしかないのかもしれません。ブロックそのものの素材よりも、どんな色や形なのかということが重要なようです。逆に大人の場合は、ブロックというよりも不思議な素材として扱っていたように思います。
やはり、玩具などとして形が完成されたものを与えると、どうしてもその形や色に目がいってしまいます。だからこそ、自分の手で何かを作るというプロセスの中で、何らかの発見をアフォードするというのが一番いいかたちなのかもしれません。その中で、いかに実験ではなくて、ものを作るというプロセスを構築できるか。ものを作るというプロセスを踏まないにしても、将来的にそこで発見したことがものづくりにつながるような仕組みをつくりたいです。

最近になって研究についてお話させていただける機会が増えてきたので、いつなにがあってもいいように研究をちゃんとまとめておかなければなと思っています。うごけうごけ。

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2011年の備忘録として。

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今年も様々な場所に行って、色々なものを見て、たくさんの人に会った。そのおかげで、仙台にいたときよりも、世界を広げることができたと思う。でもその分、世の中にはこんなにも面白い人がいて、ドキドキするようなことをしているのかととても悔しくなったり、ものすごく焦りを感じた一年だった。


ただ、学部生のときには面白いということを素直に受け入れることが多かったけど、こっちに来てからは、対象を色々な方向から見ることでその面白さを自分の中に落とし込むようになった気がする。前よりも、モノと真剣に向き合うようになったのかもしれない。
例えば「見る」ということにおいては、フォルムだけじゃなくて、どんな素材が使われているのか、どんな部品でその機構が成り立っているのか、外側よりもむしろ内側に目を向けるようになったし、デザイナーとして、作り手として、ユーザーとしてというように、色々な立ち位置からモノを見るようになったと思う。


あとは、「自分だったらどうするか」ということを前以上に考えるようになった。学部生のときは、自分の考えをかたちにすることが楽しくて仕方がなかったけど、今は、自分はあくまでフィルターなのだと思う。わたしにとって、デザインとは自分というフィルターを通すということ。だからなのかは分からないけど、前に比べて人に質問をしたり、疑問を持つことが多くなった。理由を知ることで、これはこういうフィルターを通ってこんなかたちになったのかと、新しいフィルターを手に入れることができる。そう考えるようにしたら、前よりも色々なものを見ることが楽しくなった。
でも、今年はアウトプットが全然追いついていない。溢れるのを待つ前に、コツコツ外に出しておかないといざというときに余裕が無くなる。来年はインプットとアウトプットを同じくらいのスピードでしたい。スピードだ。スピード。


2012年は、自分の軸を明確にしたい。



来年もよろしくお願いします。

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〈研究会、レビューでのFBまとめ〉


*子ども・・・認識のプロセスの途中段階にいる
→そこで何かしらのアクションを起こすことで、その後の発達や世界の広がり方に
影響を及ぼしてしまうということを念頭に置かなければならない


*抽象的な概念(かたちのないもの)をどのように認識させるか?
(具象的にすると分かりやすくはなるが、制限も生じてしまう)
・自然と○○したくなるようにアフォードする?
→まずは自分の伝えたいことを明確にしなければ、その方法を考えることができない
・自分の知識を、それを知らない子どもへどのように伝えるか、認識を変えるか
→ただし、知識を与えるというのは、自分の知っている範囲のことしか教えることができない
(専門的になればなるほど制限が生じてしまう)
・素材感を際立たせるために、色、形を統一してみる
・例えば布は「服」という形にすると、触感だけでなく着用時の違いも発見することができる
(動きやすい、温かい、風を通しやすい...)


*制限を与えたことによる子どもの創造性の発展は、
 あくまで作り手の”こうしてほしい”という願望でしかない?
→自分たちの目標へ誘導しているだけでしかないと捉えられてしまうかもしれない
⇒なんでもやっていい=実はなにもできない
(制限によって世界を広げたということを伝えられるような)


*「集める」という言葉は適切か
・「集める」という行為自体をさせたいのか、「集合体」が重要なのか
・なぜ集めるのか?
→これと決めて集めているのか、行為そのものに楽しさを見出しているのか
・集め方のフォーマットを制作するのもアリかもしれない


*「気づき」の与え方
「気づき」とはなにか
→「あっ!」という瞬間があるもの、自分でも気づかないうちに吸収されているもの
・「気づき」を“与える”道具だと、自分の知っていることしか教えられない
→発見をサポートするための道具である必要がある
・最終的に「気づき」をどのように言語化するか
・「知識」と「気づき(発見)」の関係
・特殊な状況で体験したことを、普段の活動に活かすことはできるのか?
・遊んでいるうちになんとなく理解させることが重要
→遊びに誘う仕掛けを作り、楽しさを感じさせる必要がある


*モノではなく、素材との関わり方そのものを考えてみては?
・感覚の使い方(ex.触り方、見方...)
・WS
・トレーニング方法
・しかけ
・体自体を変える(素材を変化させるのではなく)
・体全体で素材を体感する(ex.素材の海の中から、対象物を探し出す)
・素材のことをあまり明示せずにアプローチすることはできないか
・素材との向き合い方の方法論を考える
・何をどうするのか、その結果何を得ることができるのかというパスを明確にする必要がある
→素材、身体、記号など、変数をどのように限定するか


*人間は、類似したものどうしには、違いを探そうとしてしまうが、
異なるものからは類似性を発見しようとする?
(ex)田中一光
色見本を解体して、似たような色彩を同じ引き出しにしまっておくことで、
それらの微妙なニュアンスの違いを分かりやすくしている。


*まずは子どもがただの素材とどのように向き合うのかを観察する
・子どもがものの感触を確かめる最初の方法は、とにかく口に入れてみること
→手で発見するのは何歳くらいからか?
・子どもだけじゃなくて、一通り何かしらやった人の
 殻を破るために遊ぶためのものというツールでもいいのかもしれない
・大人が“再”発見するためのツールでもいいのでは?
・"○○しそうな年齢"とか、ある共通した経験のある年齢を挙げる程度でいいのでは
(年齢によって制限すると、発達段階に大きく差が生じてしまうかもしれない)
(ターゲット:こちらが目標とする遊び方や学び方をしそうな年齢)
・ある一つの素材にターゲットを絞り、
 それを使ってどんな遊びをしたかという事例をたくさん挙げる
・最終目的が“ものづくりに活かす”ことであれば、
 実際にものづくりでしそうな行動をできる仕組みをつくるべき
・1つの素材にとことん向き合わせることで、
 他の素材ではどうだろう?という疑問を生じさせることができるのでは?

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ついに大学院の後期レビュー科目が終わりました。
一度もプロトタイプのユーザーテストをしていないため、ずっと足踏み状態が続いています。
もっと子どもを観察したり、プロトタイプを実際に使ってもらわないと。
考えたことを形にするだけでは、それは思いつきにすぎません。
形を実際にユーザーに使ってもらって、そこで問題点を発見し、
それをどうやってより良くするかという、その解決方法こそがアイディアなのだと思います。
次のレビュー科目は来年の4月です。
今月中に訪問と調査をできるようにスケジュール組もう。
もっとフットワークを軽くしてスピードを早くしなきゃ。