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今一度、この研究を行なうに至った背景や動機について考え直したいと思います。
まずはこれまでの研究概要と背景のまとめです。

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【2011.06.01】
〈概要〉
本研究では、ユーザーの様々なモノに対する考え方や捉え方を通し「考えるための玩具」を設計する。
その方法として「知育」の観点から、ユーザーの「考える」という行為を促し、
思考力を高めるデザインとは何かということを追究していく。


〈背景〉
現在「植物」は専ら観賞等のためのものと位置づけされているように感じるが、
過去には「紙」の材料として用いられたり、身を守るための防具・雨具や、器として使われていた。
これは、人々が「植物」に対して大いに親近感を持っていたため、
その使い勝手のよさにも気付くことができていたのではないだろうか。
大学での卒業研究を通じ、利便性に優れたものが溢れる現代において、自ら使い方を考え、
更に何か他の事柄へ応用するという「思考力」を引き出すプロダクトに触れることによって、
そこからまた新たなモノやシステムが生まれていくのではないかと考えた。

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【2011.06.29】
〈概要〉
本研究は、子ども達に自然と触れ合うことの楽しさやその美しさへの気づきを与えることで、
環境に対する豊かな感受性や見識を持たせることを目的とする。
そして、単に正確な知識を獲得することのみを目的とするのではなく、
環境の中でそれぞれがある働きをしていることについて実感
できるよう、
自ら遊びを考え、作るという行為を通じ、
環境にかかわる積極的な態度や創意工夫の能力を向上させることのできる手工玩具の製作を行なう。


〈背景〉
遊びは子どもの成長の過程において極めて重要であるということは周知の事実であり、
その教育的価値は自立性、社会性、創造性を高め、
身体的巧緻性や情操を育てることにつながるとも言われている。
また、「植物を利用した遊び」を通して得られる効果として以下のことが予想される。
①身近なもので作る・遊ぶ
―玩具を作る際に道具を使うことによって、適切な道具の使い方も覚えることができる。
②自然に関わりながら遊ぶ
―その季節にあった植物を選び、遊びの対象とするため、四季のうつろいを感じることができる。
③諸感覚を使う
―植物の質感、香り、音などを感じることができる。
 また、手を動かすことで細やかな指先の訓練ができる。
④他人と共に遊ぶ
―コミュニケーション能力を高めることができる。

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【2011.07.05】
〈概要〉
本研究は、子ども達に自然と触れ合うことの楽しさやその美しさへの気づきを与えることで、
環境に対する豊かな感受性や見識を持たせることを目的とする。
そのために、それぞれの植物が固有の働きや仕組みを持っていることを実感できるよう、
自ら遊びを考え、創作するという行為を通じ、環境にかかわる積極的な態度や
創意工夫の能力を向上させることのできる「手工玩具」(※)の製作を行なう。

( ※ 手工玩具:「手先を使ってする工芸(大辞泉)」のための玩具を意味する筆者の造語。 )


〈背景〉
自然物におけるものづくりのプロセスは2種類考えられる。
植物を使用した場合を例に考えると、1つは笹舟等のように、
目標制作物がはっきりと決まっており、そのための素材を自ら探すというもの。
そしてもう1つは、例えば目の前に綺麗な花びらが落ちていたからイヤリングを制作した、
というように素材から制作物を考えるというもの。
どちらの場合であっても、素材そのものの性質についての知識があるからこそ
ものづくりへとつなげることができるのでは
ないだろうか。

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【2011.10.19】
〈概要〉
本研究は、自然物で遊ぶことを通して、ものを構成する素材に対する気づきを与えることで、
子ども自身を取り囲む環境に対する豊かな感受性を持たせることを目的とする。
そのために、単に正確な知識を習得することのみを目的とするのではなく、
自ら遊びを考え、手を動かすという行為を通じ、
環境に対する積極性や創意工夫の能力を向上させる、遊びの支援ツールの制作を行なう。


〈背景〉
これまでの調査を通し、素材そのものと深く向き合うためには、
“集める”という言葉がキーワードとなるのではないか
と感じた。
例えば、ある団体が主催の「自然遊び講座」では、
ほとんどの子どもが落ち葉など持参したビニール袋やプリンカップに集めていた。
そしてある子どもが、自分の集めた物を親に見せる中で、
自分が拾ったそれぞれの実や葉の違いに気がつくということがあった。
つまり、観察対象をひとつだけではなく、いくつか与えることで、
それらの特徴や違いに気づきやすくなるのではないか
と考えられる。

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とりあえず、これまでのまとめは以上です。
次の記事に続きます。