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とりあえず今のところの研究概要と背景をざっくりと。
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〈概要〉
本研究は、子ども自身の知見を広げることで、
環境に対する積極性や創意工夫の能力を向上させることを目的とする。
そしてそのために、ものを構成する素材に対する気づきを与え、
知識を深めるための遊び支援ツールを提案する。
〈研究背景〉
近年の子どもを取り巻く大きな環境の変化として、
原体験に比べ疑似体験の機会が増加したことが挙げられる。*1
これにより子どもは現実感を喪失する傾向にあり、
そのために適切な判断や選択を下す能力が低下しつつあるように感じる。
これまで調査した子ども向け工作ワークショップのほとんどは、
ただ素材が与えられ、目標とする成果物を皆で制作するというものであった。
しかしそれらの場では、素材をどのように用いればよいのか考え込み、
手が止まってしまう子どもが多々見られた。
つまりこれは、素材そのものに対する理解度が低いために、
子ども自身の思考と現実に大きな差が生じているからではないだろうか。
したがって、子どもにとって正確な知識を習得することだけでなく、
実際に五感を使って対象物を理解することも幼少期の知育において大変重要であると考えられる。
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さてここからどう後につなげていくか。
明日の研究会でのプレ発表に向けて、今日中に文章だけはまとめないと。
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前回の記事から分かるように、どの段階においても、
無理矢理理由をこじつけてばかりで、具体的な裏付けがありません。
なぜ今この研究が必要なのか。研究によってどんなことが期待されるのか。
背景と目的という、研究の重要な軸が未だにぐらついているため、
なかなかスムーズに前に進むことができていません。
とりあえず、これまでの研究概要、目的の要点を以下にまとめました。
・「考えるための玩具」
・思考力を高めるデザイン
・使い勝手のよさに気付くことができる
・それぞれの植物が固有の働きや仕組みを持っていることを実感できる
・自ら遊びを考え、創作するという行為を通じ、
環境に関わる積極的な態度や創意工夫の能力を向上させる「手工玩具」の製作
・素材そのものの性質についての知識があるからこそ、
ものづくりへとつなげることができるのではないか
・自然物で遊ぶことを通して、ものを構成する素材に対する気づきを与える
・遊びの支援ツールの制作
・素材そのものと深く向き合うためには、
“集める”という言葉がキーワードとなるのではないか
・観察対象はいくつか与えられたほうが、
それらの特徴や違いに気づきやすくなるのではないか
後のほうになるにつれて、研究の方向性が明確になってきている気がしますがどうでしょうか。
「植物」→「自然」→「素材」と対象物の変化は見られますが、
直接学ばせるのではなく、あくまで気づきを与えたいというスタンスは変わっていません。
また、それ自体が主役になるのではなく、支援ツールとして対象物とユーザーとの間に入ること、
見たり聞いたりするだけでなく、実際の体験を通じて実感させることも、
私の研究の軸になっているような気がします。
いちいち言語化し、これまでのプロセスや考えを見えるようにしておくこと。
進むことばかりに気を取られるのではなく、
一度立ち止まることで見えてくることもあるのかもしれませんね。
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今一度、この研究を行なうに至った背景や動機について考え直したいと思います。
まずはこれまでの研究概要と背景のまとめです。
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【2011.06.01】
〈概要〉
本研究では、ユーザーの様々なモノに対する考え方や捉え方を通し「考えるための玩具」を設計する。
その方法として「知育」の観点から、ユーザーの「考える」という行為を促し、
思考力を高めるデザインとは何かということを追究していく。
〈背景〉
現在「植物」は専ら観賞等のためのものと位置づけされているように感じるが、
過去には「紙」の材料として用いられたり、身を守るための防具・雨具や、器として使われていた。
これは、人々が「植物」に対して大いに親近感を持っていたため、
その使い勝手のよさにも気付くことができていたのではないだろうか。
大学での卒業研究を通じ、利便性に優れたものが溢れる現代において、自ら使い方を考え、
更に何か他の事柄へ応用するという「思考力」を引き出すプロダクトに触れることによって、
そこからまた新たなモノやシステムが生まれていくのではないかと考えた。
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【2011.06.29】
〈概要〉
本研究は、子ども達に自然と触れ合うことの楽しさやその美しさへの気づきを与えることで、
環境に対する豊かな感受性や見識を持たせることを目的とする。
そして、単に正確な知識を獲得することのみを目的とするのではなく、
環境の中でそれぞれがある働きをしていることについて実感できるよう、
自ら遊びを考え、作るという行為を通じ、
環境にかかわる積極的な態度や創意工夫の能力を向上させることのできる手工玩具の製作を行なう。
〈背景〉
遊びは子どもの成長の過程において極めて重要であるということは周知の事実であり、
その教育的価値は自立性、社会性、創造性を高め、
身体的巧緻性や情操を育てることにつながるとも言われている。
また、「植物を利用した遊び」を通して得られる効果として以下のことが予想される。
①身近なもので作る・遊ぶ
―玩具を作る際に道具を使うことによって、適切な道具の使い方も覚えることができる。
②自然に関わりながら遊ぶ
―その季節にあった植物を選び、遊びの対象とするため、四季のうつろいを感じることができる。
③諸感覚を使う
―植物の質感、香り、音などを感じることができる。
また、手を動かすことで細やかな指先の訓練ができる。
④他人と共に遊ぶ
―コミュニケーション能力を高めることができる。
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【2011.07.05】
〈概要〉
本研究は、子ども達に自然と触れ合うことの楽しさやその美しさへの気づきを与えることで、
環境に対する豊かな感受性や見識を持たせることを目的とする。
そのために、それぞれの植物が固有の働きや仕組みを持っていることを実感できるよう、
自ら遊びを考え、創作するという行為を通じ、環境にかかわる積極的な態度や
創意工夫の能力を向上させることのできる「手工玩具」(※)の製作を行なう。
( ※ 手工玩具:「手先を使ってする工芸(大辞泉)」のための玩具を意味する筆者の造語。 )
〈背景〉
自然物におけるものづくりのプロセスは2種類考えられる。
植物を使用した場合を例に考えると、1つは笹舟等のように、
目標制作物がはっきりと決まっており、そのための素材を自ら探すというもの。
そしてもう1つは、例えば目の前に綺麗な花びらが落ちていたからイヤリングを制作した、
というように素材から制作物を考えるというもの。
どちらの場合であっても、素材そのものの性質についての知識があるからこそ
ものづくりへとつなげることができるのではないだろうか。
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【2011.10.19】
〈概要〉
本研究は、自然物で遊ぶことを通して、ものを構成する素材に対する気づきを与えることで、
子ども自身を取り囲む環境に対する豊かな感受性を持たせることを目的とする。
そのために、単に正確な知識を習得することのみを目的とするのではなく、
自ら遊びを考え、手を動かすという行為を通じ、
環境に対する積極性や創意工夫の能力を向上させる、遊びの支援ツールの制作を行なう。
〈背景〉
これまでの調査を通し、素材そのものと深く向き合うためには、
“集める”という言葉がキーワードとなるのではないかと感じた。
例えば、ある団体が主催の「自然遊び講座」では、
ほとんどの子どもが落ち葉など持参したビニール袋やプリンカップに集めていた。
そしてある子どもが、自分の集めた物を親に見せる中で、
自分が拾ったそれぞれの実や葉の違いに気がつくということがあった。
つまり、観察対象をひとつだけではなく、いくつか与えることで、
それらの特徴や違いに気づきやすくなるのではないかと考えられる。
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とりあえず、これまでのまとめは以上です。
次の記事に続きます。
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前回の記事を通し、今のところ私は以下の3点に面白みを感じています。
〈1〉意外なものを集めることのできる道具
ー見えないもの(ex. 音、空気、光...)を見える化して集める
ー見えているものを見えない化(?)して集める
ー見えているものを他のかたち、状態に変換して集める
(Life of Gearge のように、スキャニングしたものを全てレゴに置き換えるような)
〈2〉遊んでいるうちに偶然「集まっている」道具
ー走り回ってるうちに洋服にたくさんくっついているというような
ー万歩計のように行為を集めることができる
〈3〉集めたものを観察ではなく“感察”できるような道具
ー視覚的にだけでなく、五感を使って対象物と向き合うことができる
〈1〉の場合は、「集める」過程も完了した状態も両方楽しむことができ、
〈2〉の場合は、普段の行動に「集める」という行為が付加価値としてプラスされます。
〈3〉の場合は、「集める」行為ではなく、対象物そのものにフォーカスしています。
3つとも対照的な考え方ですね。
今はひとつだけに絞るのではなく、それぞれについて考えていきます。
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「集める」とはどういうことか。
私は「集める」に関係する行為や事象は、
下の図のように大きく3つの時系列で表すことができると考えています。
①「集める」行為を行なっているとき
「集める」行為そのもの
(拾う、採集、収集、ピックアップ、手に入れる、溜まる、積もる、蓄積...)
(ex.虫取り網 = 昆虫を「集める」)
②「集める」行為が完了したとき
ある対象物や事柄が「集められた」「集まった」とき
(パズルなどのように集められることで完成する、まとめる...)
(ex.虫かご = 昆虫が「集まった」状態にする)
③「集められた」「集まった」対象物を
ある行為、事象、事物などによって次の段階へうつすとき
(コレクション化、アーカイブ、集約、混ぜる、交ぜる、合体、揃える、ドキュメント化...)
(ex.観察するためのもの = 「集まった」昆虫を次の段階へすすめる)
以上のように、「集める」行為それぞれの段階に応じたプロダクトがあるようです。
更にここから、どの段階にフォーカスしているか、という分類をするべきなのかもしれません。
行為そのものがメインなのか、集まったら完成なのか、
それとも集めたものをなにかまた他の行為に用いることが目的なのか。
3つを別々に分けて考えることは難しいですが、
重点を置いているポイントは定めたほうが良さそうです。
そうすると、それぞれの段階において例えば次のような道具(玩具)の可能性が考えられます。
①
(1)「集める」という行為を物理的にサポートする道具(ex.虫取り網、マジックハンド...)
(2)「集める」という行為を心理的にサポートする道具(ex.問題を解いた後の花マル(喜び)...)
(3)意外なものを集められるようにする道具(ex.マイク(音を集める)、カメラ(瞬間を集める)...)
(4)遊んでいるうちに偶然「集まっている」道具(ex.いつのまにか洋服にくっついているオナモミ...)
②
(1)「集める」ことで完成となるための道具(ex.パズル...)
(2)「集めた」ものをアーカイブするための道具(ex.標本箱、コレクションケース...)
③
(1)「集めた」もので遊ぶための道具(ex.工作関係?...)
(2)「集めた」ものを観察するための道具(ex.顕微鏡、ルーペ...)
どれももうすでに既存のものばかりですね。
ここから新たな道具の可能性を考えるか。それともある段階にフォーカスして考えるか。
次の記事に続きます。